UNESCOユースセミナー2016:多文化・多様化する日本の学校 2日目(7月30日)

2日目は昨夜に引き続き、「ユネスコスクールを作ろう」というアクティビティーの中で人権、エネルギー、国際理解などのテーマに分かれ、グループワークからのスタートです。午後に行われるプレゼンテーションに向けて、各グループで話し合い、どんな教育を行いたいかなど少しずつアイデアや議論の結果を落とし込んでいきました。中にはほとんど寝ないで交流をしていた参加者もいましたが、疲れをおくびにも出さず誰もが真剣に取組んでいる姿は感動的でした。たった1日の交流で、国籍や生まれた国、話す言語などいろんなバックグラウンドを持つ参加者たちはとても親しくなっているようでした。

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昼食のあとは、ゲストによるトークショーが開催されました。本学部の戸谷毅史学部長による挨拶の後、まずは社会人ボランティア団体「ランド・オブ・ドリーム」代表でモデルの中川マリーさんのお話が始まりました。(公式ブログ
マリーさんはアフリカ系フランス人の父と日本人の母の間に生まれ、外見的なことが理由で凄惨ないじめを体験しました。そのため随分と長い期間を不登校として過ごします。幼少期の経験から振り返りつつ話してくれるマリーさん。会場は彼女の言葉と想いに包まれ、熱心に彼女の一言一言に耳を傾けていました。そんな苦しい日々にいた彼女に転機が訪れたのが、進学した国際高校に自分と同じように海外にルーツを持つ同級生に出会ったこと、そして、友人の一言でした。その友人はこれまで馬鹿にされ続けてきたマリーさんの髪や肌を「かっこいい」と言ってくれたのです。それから多くの素晴らしい出会いや出来事があり、「未だ雑誌の表紙を肌の黒いモデルが飾ったことのない」日本で「ハーフブラックモデル」として活躍する今へと至ったそうです。とは言っても今でも差別は厳然としてある現状も話してくださいました。

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会場からは質問が相次ぎました。どの質問者も、彼女の生い立ちや過ごしてきた半生を思い、言葉に詰まってしまうことが少なくありませんでした。そして同時に、自分の半生での様々な出来事を思い返さずにはいられなかったんだろうと思います。海外にルーツをもつ参加者が日ごろ感じている葛藤や不安を話し、中には質問の途中で泣き出してしまう参加者もいましたが、マリーさんはすぐにそばに寄り添い、抱きしめて話を聞いていました。様々な質問の中に「マリーさんにとって一番自信に思っていることは何ですか」というものがありました。それに対しマリーさんは「世界にたった一人しかいない自分という存在。このことが自分にとって一番の自信です」と答えていました。参加者からの多くの質問があり、予定していた時間を大幅に超えての終了となりました。終了してからも直接感想を述べたり写真を撮ったりと、マリーさんの周囲には人波が途切れませんでした。

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マリーさんのトークショー後には、各学校から参加した先生たちによるクイズ形式の学校紹介が行われました。全部で8校の先生たちが1列に並び、授業内容や学校の方針などについて一つずつ丁寧に発表しました。どの学校も千差万別。こんなにもいろんな学校が周辺にあると知れただけでも大きな収穫となったと思います。

クイズの後は、夜間中学で何年も音楽を教えてこられた澤井留里さんのトークショーでした。「夜間中学の現状について」と題された講演では夜間中学とは何か、そこでの学びがどのような意義があることなのかが語られました。夜間中学とは公立の中学校で夜の時間帯に授業が行われる学級のことをいい、戦後の混乱期に学校に通えなかった人や、不登校になってしまった生徒など、様々な理由で中学校に通えなかった人たちへ学びの場を提供するものです。最近は学齢超過で中学校へ入れなかった外国人の若者も多く通っているということでした。(政府広報オンラインによる夜間中学校の解説
多くの人に開放された学びの場であるものの、いまだ全国で東京から広島までに31校しかなく、多くの都道府県には1校も存在していません。澤井さんのメッセージはどれもあたたかく、真剣なものでした。印象的だったのは「”私なんか”と言う生徒たちが、”私だって”と言えるように環境を整えていくのが私たちの仕事」とおっしゃっていたことです。
澤井さんはお話の前と最後に、持参したアコーディオンで歌を披露してくださいました。優しい歌声とアコーディオンの音色に参加者は聴き入っていました。最後は会場の全員で「ふるさと」を合唱して終了しました

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最後のプログラムとして「ユネスコスクールを作ろう」のプレゼンテーションが行われました。各グループごとに制作したポスターの前で、人権教育、エネルギー教育、文化教育、文化交流、国際理解教育、環境教育、児童労働について、といったテーマについてユネスコスクールでどんな教育活動が行われるのが望ましいか、話し合った内容が発表されました。提案内容はそれぞれ違うものの、どのチームも「当事者意識を持って接するためには」といった方向性が見られました。グループ内でだけでも様々な文化背景を持つメンバーが集まっているワークショップでした。プレゼンテーションの一つ一つから、結論に至るまでのプロセス、共に過ごした時間がとても充実していたことが窺い知れました。

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この二日間のセミナーは参加した高校生たちにとってとても刺激の多いものになったと思います。何より自分たちの住む地域のすぐ近くにこんなにも様々な学校があり、こんなにも様々なバックグラウンドを持ったユースがいる、ということを体験として知ることになりました。それはきっと参加した先生たちも同様だったのではないでしょうか。
学校紹介を丁寧に見れば見るほど、日本の政府から「一条校」として認められているかどうかという違いから、透けて見える学校への公的助成の差というものも浮き彫りになりました。認可の有無や学校法人か否かということにより、単純に県や国から助成が受けられない、または、受けている助成金の額が異なることで、学校経営がいかに苦しいかということも直接言葉にはせずとも伝わったはずです。
ですが、キラキラした眼差しで真剣にそれぞれのアクティビティーに参加する高校生たちを見ていると、どんなバックグラウンドであれ等しく「教育への権利」は守られるべきであること、そしてそのことが子どもたちの成長にいかに重要であるかを感じさせられるセミナーでした。「日本国政府によって公的な承認を受けられている学校」でないことで、このような会に参加する機会の少ない高校生たちにとって、素敵な出会いと学びの場を作れたことを嬉しく思うと同時に、今回のセミナーで生まれたつながりが広く全国へ伝播し、より良い社会の形成の一助となったらと切に願います。

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