今月のトピックス

資源循環の転換期

2018/06/01

製造現場における社会的責任に関した近年の変化について、「もの」のINPUTとOUTPUTに分けてトピックを取り上げます。

まず、INPUTについては、以前よりライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)に基づき設計段階からの検討が進んでおり、省資源や有害物質回避が進められています。最近ではさらに国際的なCSR(企業の社会的責任)の面から反社会的組織への資金調達の防止も求められるようになりました。

米国では2010年制定の「トッド・フランク法(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act)」第1502条で「紛争鉱物開示規制」(対象物質:スズ、タンタル、タングステン、金)が定められました。この規制では、紛争地域の武装勢力の資金源となっている鉱物輸出を停止することが目的となっています。紛争地域では深刻な人権侵害も発生しています。この規制では、米国で上場している企業は鉱物のサプライチェーンも含めた入手先を調査し、当該勢力に資金が流れる虞がある取引を止めなければなりません。この調査結果は、米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission:SEC)に報告書として提出する義務があります。この法律は、本年より本格的な施行となっており、世界の多くの企業でとりまとめを行っています。企業のESG(Environment、Social、Governance)経営にとって重要な活動です。CSR(企業の社会的責任)、及びSRI(社会的責任投資)を受けるに当たって外部から評価を受けることになります。

サプライチェーンも含めた材料入手先を把握することは非常に難しく、大きなコストがかかります。社会的コストが拡大したともいえます。国際社会における悲惨な事件を防止するために社会的側面からの重要性も高まっています。複数の国でナショナリズムが高まっていますが、人の生存する権利や幸福になる権利といった、いたって基本的な権利は中長期的には最も配慮しなければならなくなると考えられます

EUでも2016年11月22日に「紛争鉱物規制法」(EU法:regulation)が採択され、立法手続きが順調に進めば、2021年1月1日に施行されることとなる。規制の詳細は現在検討中です。鉱物購入の事前調査を義務づけることは米国のトッド・フランク法と同じです。ただし、安価な資源を求める者や米国トランプ政権は不必要な規制と主張しています。

次に、企業から排出されるものや使用済製品についてOUTPUT面を見てみたいと思います。既に3R(減量化、リユース、リサイクル)や有害物質の適正処理が推進されています。しかし、昨年末より日本のこの処理処分が見かけ上のものだったことが明らかになりつつあります。日本から排出された莫大な量の廃棄物をリサイクル資源利用として中国が輸入規制を始めたからです。

中国では、2016年からの全国人民代表者会議(以下、全人代とします)で示された13次5カ年計画で、国家主席を委員長とする委員会で、輸入ゴミの規制強化、廃棄物資源の輸入規制の検討を進めています。2017年から段階的に輸入規制がはじまり、2019年には工場から排出される廃棄物も対象となります。対象物もプラスチック、鉄、銅など金属、鉛、カドミウムなどを含むスクラップなど広げていく予定となっています。

日本が家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)を施行した際に、中国にリサイクルできない使用済製品が大量に廃棄物資源として輸出されました。その際にリサイクルしにくく、処理処分コストが高い有害物質が混入していたことが問題になりました。そして2002年8月15日に家電等有害物質を含有しているものに対して、国家環境保護総局、税関、対外貿易経済協力省連盟の通達で日本からの輸入を禁止しました。そもそも有害物質の輸出入は「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」で禁止されています。中国は日本よりも先にこの条約に批准しています。


図 マテリアルリサイクル重点地域(中国)
中国はこの10数年間に急激な経済発展が進み、これからは国内から大量の廃棄物が発生するため、わざわざ外国から資源にするための廃棄物を輸入しなくてもよくなりました。2020年には輸入をしなくなることは、以前から中国政府が公表していたことです。少し前倒しで行われたこととなります。マテリアルリサイクル産業の育成は計画に行われており、中国政府は図に示すリサイクル重点地域を指定し、日本も含め海外からの業者は全てこの地区に集められました。これにより処理システムの大規模化を進め技術レベルの向上と資源供給市場の安定化を進めました。そしてこの地域でマテリアルリサイクルされた資源の外国への輸出は禁止され国内への供給システムを作り上げました。今後中国国内からの廃棄物資源の回収目標を上げリサイクル産業を強化していこうとしています。

対して日本では輸出できなくなった大量の廃棄物(一般廃棄物は市町村、産業廃棄物は事業者が責任を負います)を処理処分しなくてはならなくなりました。不法投棄や最終処分場の逼迫が懸念されます。処理処分技術の向上、回収から処理処分のシステムの再検討が必要となっています。

以上、製造現場における最近の問題点を取り上げ紹介しました。資源の輸入先、行き場がなくなった廃棄物の処理処分について、これから注目していかなければなりません。

勝田 悟